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下町ロケット級の感動! SCOTCH GRAIN/スコッチグレインの工場見学会に行ってきた

2018年10月20日

みなさまこんばんは、エル・ハラペーニョです。

早速ですが、昨晩の記事の答え合わせといきましょう。

私が昨日急にスコッチグレインの40周年記念モデルの記事を投稿した理由……。

それは……。

タイトルからお分かりになる通り、第8回スコッチグレイン本社工場見学会に当選したからでした!

せっかく工場見学にいくなら、しっかり手入れをした靴を履いて行きたいし、せっかくお手入れをするなら靴もブログでご紹介しようと思った次第でした。

そんなわけで、今日はスコッチグレインファンには堪らない、ヒロカワ製靴の本社工場の様子を、写真たっぷりめでご紹介しますよ!

(帰宅後に記憶をたどりながら書いているので、不正確な部分もあるかもしれない点、ご容赦ください。
なにかお気づきの点がございましたら、ご連絡頂けますと幸いです)

集合~オリエンテーション

結構積極的にPRしているので、ご存知の方も多いかとは思いますが、スコッチグレインの本社は東京スカイツリーのお膝元、墨田区にあります。

最寄り駅は東武スカイツリーラインの東向島駅で、駅から約10分ほど歩くと本社工場に到着します。

(写真:ヒロカワ製靴本社工場)
スコッチグレインを製造するヒロカワ製靴の本社工場

到着すると本社工場からほど近くにある応接室に案内されます。

自分の名前が記載されたラベルが用意されている席について待っていると……。

なんとさっそく廣川社長がいらっしゃって、早めに到着した参加者と雑談チックに靴作りについて熱く語ってくださいました。

近年ヨーロッパでも牛肉の需要が低下している事もあって、良い革が手に入りにくくなっているとのお悩みや、100点満点の革でなくても商品化すべくアイロンを作成して提携先に導入している話など、興味深い話をたくさん伺えました。

まだ正式に見学会が始まったわけではなかったのに、廣川社長のお話はどれもとても興味深く、社長が心の底から靴作りに情熱を注いでいる事をひしひしと感じられて、既にテンションはマックスです。

一日中でも聞いていられそうなぐらいに興味深いお話の数々でしたが、10時になると工場見学会が正式にスタート。

まずは部長さんより今回の見学会について簡単なご説明を頂いた後に、社長の挨拶、そして4名前後の班に分かれて、各班を案内してくださる担当の社員さんのご紹介へと続きました。

今回の見学会の応募者はなんと200名、当選者は16名という狭き門だったそう。

初応募にして当選しちゃうなんて、私は相当ラッキーなようです。

工場見学

本底・中底の裁断

一番最初にご説明頂いたのは、本底と中底の製造過程です。

(画像:本底・中底)
まずは本底・中底について解説

本底・中底に使用する革は、どちらもイタリアのタンナーCMS社から仕入れたもの。

我々が目にする機会の多い甲革は生後三ヶ月~半年ぐらいの革が使われる一方で、底には生後一年~三年の革を使用する事が多いようです。

他のメーカーだとモデル毎に使用するパーツを変える事が多いですが、スコッチグレインでは高級モデルも中級モデルもアウトレット品も、全て甲革のランクが異なるだけで、その他のパーツの素材は原則同一にする事で、タンナーへの大量発注が可能となり、より安く良い革靴を我々に提供して頂いているとの事。

企業努力に頭が下がります。

また、スコッチグレインでは、靴のサイズに応じて、本底・中底の厚みを3mmと2.7mmで使い分けており、大きなサイズの靴を履いている人は体重も重く、靴底のすり減りも早いであろうから3mmにする一方で、小さなサイズの靴を履いている人は体重も軽い傾向にある為、厚底にしてしまうと、靴底の曲がりが悪くなって履心地が悪くなってしまうので2.7mm、なんて具合に、靴底一つとっても、使い勝手・履き心地に徹底的に拘っている事が伺えます。

予備講義を受けたら工場に入ります。

(写真:底の型抜き)
厚い一枚革から、底を型抜きする様子

無駄な部分が出ないよう、職人さんが丁寧に型を当てながら、どのように型抜きをしていくか、一生懸命調整されていました。

(写真:大きなプレス機)
大きなプレス機も使います。

J.M.Westonも使っている底革が使えるようになったものの、かなり硬めなので、履き心地を良くする為に様々な工夫もされているそうです。

(写真:中底&リブ)
中底に接着剤を塗り、リブを貼り付ける

出来上がった中底には、グッドイヤーウェルト製法の要となるリブを職人さんが一つひとつ丁寧に貼り付けていきました。

普段あまり意識する事のない靴底ですが、なかなか奥深いです。

甲革の選定・裁断

次に、工場の二階に上がり、廣川社長直々に甲革の選定についてご説明いただきます。

(選定された革)
選定された革。奥の左からA等級、B等級、C等級

大量に納品されたばかりという、アノネイ社のベガノです。

今では100枚革が納入されても、10枚ぐらいしか文句なしの一級品はないとの事で、選定も一苦労。

出来上がりのイメージを踏まえながら、バラつきが出ることのないよう、一人の人が一貫して選定していくそうです。

(写真:ネックのシワ)
ネックの部分にはどうしてもシワが……

しかし、生き物から取れる以上は、思い通りにはいかないのが牛革の難しいところ。

特に首の部分には、このようなシワが出てきてしまいがち。

スチームを当てたりして伸ばせるものは伸ばして、どうしようもないものはアウトレット品や財布等の小物に利用していたそうですが、ネック部分の在庫ばかりが積み上がる一方……。

そんな悩みを解決すべく生み出されたのが、直営店限定販売の「スパイダー」モデル。

墨田区の「すみだものづくりコラボレーション」プロジェクトとして墨田区のデザイナーとコラボして編み出された、ネックの革の比較的シワの少ない部分を切り出して、パッチワークのように縫い合わされたブーツです。

他のモデルの革靴であれば、片足6つ程のパーツを組み合わせれば完成するところ、使うパーツ数はなんと19

(写真:普通の靴を作る際の型取り)
スパイダーではないモデルを作る際の型取りイメージ
(普段はチョークは用いないとの事)

かなり手間暇がかかる一方で、人気爆発中につき、今では上質な部位よりも先に、まずはネックの部分をスパイダー用に持っていくような事もあるとか。

こうして選定された甲皮は、匠ジャパンと同じ建物にある工場へと運ばれます。

(写真:匠ジャパン)
スコッチグレインを専門に修理する匠ジャパン。いつか私もお世話になる事でしょう

そして、職人さんが型を抜きます。

(写真:甲革を抜く)
甲革を型で抜く様子

張りがあるお尻側の革はつま先に使用したり、最高の出来上がりをイメージして、工夫しながら裁断していくとの事。

また、別な職人さんは、革と革とが重なり合う部分の厚みを調整します。

(写真:厚みの調整)
重なり合う部分の厚みを調整

細かいところまで職人の手で調整されているからこそ、スコッチグレインの靴は履きやすいんですね。

修理の鉄人 匠ジャパン

そして、スコッチグレインと言ったら忘れちゃいけないのが、修理工房の匠ジャパン。

靴修理の専門店は他にもありますが、匠ジャパンに注文すれば、純正のパーツで修理してもらえる(しかも格安!)のが嬉しいですよね。

毎月約2,000件の修理依頼に対応しているらしいです。別な業者に出しているユーザーさんも一定数いるであろう事を考えると、スコッチグレインの人気の高さが伺い知れます。

見学時にはちょうどオールソールの修理依頼に取り組まれている修理職人さんがいらっしゃいました。

(写真:修理職人)
繊細かつ大胆なペンチづかい
(写真:オールソール中)
ここからもう一度素敵な靴に生まれ変わるんですね
修理が完了した靴を再び縫い付けます

オールソールをした時の縫い付けについては、勿論一般の修理業者でも対応は可能ですが、その際にスコッチグレインでは元ある穴にもう一度糸を通す一方で、修理業者によっては今までの穴を無視して糸を通してしまい、3度目以降のオールソールができなくなったりするケースもあるから、注意が必要とのことでした。

私はまだまだスコッチグレイン初心者なので、修理依頼をするのは数年後になるとは思うのですが、熟練の職人さん達が丁寧に修理してくださる事が分かり安心しました。

木型

匠ジャパンの見学が終わると、最初に写真を撮影した本社工場の地下へ。

そこで私達を待ち受けていたのは……

(写真:大量の木型)
大量の木型。サイズでカラーを分けているとのこと

大量の木型でした。圧巻です。

社長の奥のダンボールに乗せられた赤い木型は、ご自身の手で初めて作った木型だとの事。

先の細い木型を作ったら、気に食わない先代が削ってしまい、先代がいなくなったすきにパテで再度作り直して……。

そんな先代とのバトルの末に、今のスコッチグレインの地位があるんですね。

甲革の完成に向けて

そして一階に上がると、そこでは主に甲革の調整を行っていました。

(写真:甲革機械にセット)
甲革を機械にセットし
(写真:甲革に圧力をかける)
圧力をかけると
(甲革が靴の形に)
平らだった革がしっかり靴の形に

ふむふむ。裁断されたパーツはこうして少しづつ立体的になっていくわけですね。

そしてここで地下で見かけた木型が登場します。

ここからがつり込みと呼ばれる作業です。

(写真:木型と機械に)
木型を装着して何やら機械に入れると
(写真:踵が固定される)
踵の甲革が固定されました。
(写真:木型とともに機械へ)
それをまた別な機械に入れると
完全に見慣れた靴の形になりました

様々な機械を使ってこそいますが、一つ一つの作業を行う職人さんは真剣そのもの。

細かい微調整には職人特有の感覚が求められる部分も多々あって、機械の正確さと職人の感覚とか組み合わさって素敵な靴が作られているのでしょう。

随所に職人魂を感じます。

(写真:見慣れた形のものを更に機会に入れる)
おや、次の機械はなんなのでしょうか?
(写真:甲革とリブが縫い付けられる)
なるほど、甲革をリブに縫い付けていたのですね

すくい縫いを経て、いよいよかなり革靴らしくなってきましたね。

靴底から仕上げまで

スコッチグレインの靴はとても履きやすいですが、その秘密がこれ。

(写真:EVA樹脂)
スコッチグレインではコルクの代わりにEVA樹脂を採用

一般的に本格革靴ではクッション材にコルクを入れる事が多いのですが、スコッチグレインではEVA製のスポンジを使用しています。

元々は創業した頃に素材の調達に困り、ビーチサンダル用のEVAを分けてもらったところから始まったらしいですが、今ではむしろコルクと比べて劣化しにくい事から使い続けているようです。

(写真:接着)
接着剤を薄く塗って
(写真:機械で圧着)
機械で圧着
(写真:固定された靴底
すると大きめの靴底が甲革に固定されます

スコッチグレインの靴は全てグッドイヤーウェルト製法なので、接着剤は薄めで、あくまで仮の役割

ここからがグッドイヤーウェルトの真髄ですよ。

(写真:溝を掘る)
糸で縫い付けるための溝を掘って
(写真:溝の周囲を飾り付け)
その周りに焦がしで飾り付けをします
(写真:溝の周りに飾り)
そして最後に糸を溝に通していくと
(写真:見慣れた靴底)
なんということでしょう。我々の見慣れた靴底になったではないですか

グッドイヤーウェルトは縫い付けが二回行われるっていうのはこういう事だったんですね。

(写真:靴に角度をつける)
靴底に角度をつけたりして馴染ませて
(写真:靴底のサイズを調整する)
先程まではだいぶ大きめだった底を靴のサイズに合わせたら
(写真:ヒール)
ヒールを熱で溶かして
(写真:ヒールを圧着)
圧着します

これでスコッチグレインの真髄、グッドイヤーウェルト製法の靴の完成です。

最後に職人さんの手で靴に最終仕上げが施されて、完成です。

(写真:くせの微調整)
熱(蒸気?)で細いくせを調整
(写真:艶出しを塗布)
水性の艶出しを塗布
(写真:完成品)
モルトドレッシングは、就業後に希望者が残業として行っているとのこと

こうして1日に480足もの靴が完成するとの事ですが、ちょっとにわかには信じがたいです。

いくら機械を使っているとはいえ、手作りで1日に480足ですよ。

職人さんってスゲー。ものづくりってスゲー。

普段内勤でパソコンをカタカタしている身としては、尊敬の念を禁じ得ません。

お昼ご飯

感動の工場見学が終わった後には昼食のお時間です。

ご用意いただいたお弁当がこちら。

(写真:立派そうなお弁当)
立派そうなお弁当
(写真:すみだちゃんこ巻)
見た目にも鮮やかなすみだちゃんこ巻

太巻きメインに天ぷらや煮物の入った、とても立派なお弁当でした。

ちゃんこ巻は、墨田区には両国国技館がある関係で、相撲にちなんでつくられたメニューらしっく、土のつかない15種類の食材で作られおり、また牛や豚などの手をつく4足の食材は入っていないとの事。

すごくコンセプチュアルで話題性抜群なメニューであると同時に、お味の方も絶品でした。

今度両国国技館でプロレスを観る時にでも、改めて自腹で購入したいと思います。

特別販売会

美味しいお弁当に舌鼓を打った後に向かったのは、倉庫で行われた特別販売会です。

(写真:特別販売会)
一部目玉商品が陳列されていました

基本的には倉庫なのですが、数種類の目玉商品が机に並んで陳列されていました。

主にアウトレット向けの商品のようで、並んでいないものでも、色やサイズ等を社員さんにお伝えすると裏から探してきてくださいます。

スコッチグレインのアウトレットは、レギュラーラインナップにはない魅力的な商品も多いんですけど、なかなか頻繁には行けないので、こうして購入できるのはありがたいですね。

私も、次回アウトレットに行ったら絶対購入しようと思っていた、スエードのローファー

(写真:スエードのローファー)
黒いスエードのローファー(税抜20,000円)

ミディアムブラウンのスパイダーを購入しました。

左は展示品、右が購入したもの
使用する革が、マイナーチェンジを経て濃いめのブラウンになっています

いや、だって、さっき甲革の説明受けた時に社長がすごく熱くスパイダーの説明してたんですよ。

そして、仕事用の靴は一通りスコッチグレインで揃えてしまったんですよ。
(あ、雨の日用のシャインオアレインは欲しいんだった……)

じゃあ、何買うか、スパイダーでしょ!!!(林先生風に)

実際前から欲しいなと思っていたので、ちょうど今回B級品が30,000円で買えると言われたら、そりゃ買っちゃいますよね……。

いい買い物も出来て、余は満足じゃ。

モルトドレッシング実演会

一通り物欲が満たされても、まだ終わりじゃないのがこの見学会の素晴らしいところ。

なんと、案内役を務めてくださっていた社員さんが、買った靴にモルトドレッシングを施してくれるのです。

私は当然スパイダーのモルトをお願いする事になるのですが……。

まぁ、時間内に終わるわけないですよね。ごめんなさい。

(写真:スパイダーにモルトドレッシング)
見本を見ながらモルトを施してくださる社員さん

スパイダーにモルトドレッシングを施すと、グラデーションがついてものすごくカッコいいんですが、先述の通り、スパイダーは片足毎にパーツが19個。

基本的につま先と踵の2箇所を中心にモルトドレッシングすればいいノーマルな革靴とは工数が全然違うのです。

社員さんは、スパイダーのモルトドレッシングのコツを丁寧に教えてくださりながらも、手も全力で動かしてくださっていたのですが、残念ながらタイムアップ。

「自信ないけど、ゆっくりと休日にでも教わった事を踏まえてやってみるか」

と思っていると、

「あとは責任持って仕上げて、ご自宅まで郵送させて頂きます」

本当にいいんですか~(号泣)
(しかも後で知りました。本当はスパイダーのモルトドレッシング仕上げって、5,000円するんですね……)

スコッチグレインさん、太っ腹すぎます。一生ついてきます。

最後に

こんな具合に、自分が普段愛用している靴がどれだけ丁寧に、そして情熱を込めて作られているかを学べ、そして美味しいお昼ご飯とモルトドレッシングまでしてもらえる、至れり尽くせりな工場見学会

参加すると、もっともっと、想像を超えるぐらいにもっと、スコッチグレインが大好きになりますよ。

かなりの高倍率のようですが、皆様も諦めずに応募してみてください。

いやいや、これで終わるとお思いでしたか?

甘いですよ。甘すぎますよ。

スコッチグレインさんは、本当に太っ腹なんですってば。

多分、アラブの石油王と裏で繋がってるとしか思えないぐらいの、ホスピタリティの具現化のような存在なんですってば。

つまりは何が言いたいかというと、参加費無料の工場見学会にもかかわらず、なんとお土産もあるのです。

それがこちら

(写真:豪華なお土産)
お土産まで頂いてしまっていいのだろうか
  • お弁当屋さんの特製ちりめんじゃこ
  • アノネイ社のネックレザーを使った名刺入れ
  • モーモー
  • 靴べら

なんという豪華4点セット。

本当にこの工場見学会、無料でいいんですか?

ひょっとして、後から参加費5,000円とか請求されるんじゃないんですか?
(仮にそうだったとしても喜んでお支払いするぐらいに素晴らしい工場見学会でしたが)

ちょっぴり怖くなってしまうぐらいに、スコッチグレインさんの全力のお・も・て・な・しを感じた一日でした。

スコッチグレインさん、一生ついていきます。

スコッチグレインさん、愛してま~す!!(棚橋弘至風に〆てみる)

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